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アドブルー噴射異常の警告が消えた原因とリセット方法を解説
アドブルー噴射異常の警告灯が点灯した後、しばらく走行していると自然に消えたという経験をお持ちの方は少なくありません。特にいすゞのギガやエルフ、フォワードなど尿素SCRシステムを搭載したディーゼルトラックでは、この現象が頻繁に報告されています。
警告が消えたことによって「問題が解決した」と判断してしまうと、根本的な故障が進行し、一度エンジンを停止した後に再始動できなくなる深刻な事態を招く恐れがあります。アドブルー噴射異常は一時的に回復するケースがあるため、警告が消えた理由を正しく理解することが欠かせません。
この記事では、アドブルー噴射異常の警告が自然に消える原因や走行時の注意点、修理で交換する部品、警告灯のリセット方法まで詳しく解説します。
このページの内容
- アドブルー噴射異常の警告が自然に消える原因
- NOxセンサーの接触不良が一時的に回復した
- 噴射ノズルの結晶詰まりが走行中に解消した
- ECUが一時的に正常と判定して警告灯が消灯した
- アドブルー噴射異常が出ても走行できる条件
- 警告灯の点灯後に走行できる距離の目安
- エンジンを切ると再始動できなくなるケース
- アドブルー噴射異常の修理で交換する主な部品
- NOxセンサーの交換
- アドブルーインジェクターの交換
- 尿素水チューブやフィルターの交換
- アドブルー噴射異常の警告灯をリセットする方法
- アドブルー噴射異常に関するよくある質問
- アドブルー噴射異常は自分でリセットできますか?
- いすゞのギガやエルフで噴射異常が多い原因は何ですか?
- アドブルー噴射異常の修理費用はどのくらいですか?
アドブルー噴射異常の警告が自然に消える原因
アドブルー噴射異常の警告が消えた場合でも、尿素SCRシステムの根本的な問題が解決したとは限りません。尿素SCRシステムとは、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)をアドブルー(高純度尿素水溶液)で化学的に無害化する排出ガス後処理装置のことです。
一時的に正常動作に戻る代表的な原因として、以下の3つが考えられます。
- NOxセンサーの接触不良が一時的に回復した
- 噴射ノズルの結晶詰まりが走行中に解消した
- ECUが一時的に正常と判定して警告灯が消灯した
それぞれ原因のメカニズムは異なりますが、いずれも一時的な回復であり再発する可能性が高いです。
それでは各原因について、詳しく解説していきます。
NOxセンサーの接触不良が一時的に回復した
アドブルー噴射異常の主な原因のひとつが、NOxセンサーの故障です。NOxセンサーとは、排気ガス中の窒素酸化物濃度を測定する部品で、SCRシステムがアドブルーの噴射量を適切に制御するために使用しています。
G-SCANの解説記事では、アドブルー噴射異常の原因としてNOxセンサーの故障が最も多いとされています。センサーのコネクター部分に振動や温度変化による接触不良が発生すると、ECUが異常値を検出して警告灯を点灯させます。
接触不良による警告灯点灯の主な原因は、以下の通りです。
- コネクターの腐食や緩み
- 配線の断線や被覆の劣化
- センサー内部の素子劣化
走行中の振動によって接触が一時的に回復すると、警告灯が消えることがあります。ただし、接触不良は走行条件によって症状が出たり消えたりを繰り返すため、放置するとセンサーが完全に機能しなくなり走行制限がかかる恐れがあります。
噴射ノズルの結晶詰まりが走行中に解消した
アドブルーはISO 22241規格で定められた32.5%濃度の尿素水溶液(AUS 32)であり、噴射ノズルやフィルター周辺で水分が蒸発すると白い結晶として残留します。この結晶がノズルに蓄積して詰まりを起こすと、噴射量の異常として警告灯が点灯する場合があります。
走行中にマフラー周辺の温度が上昇すると、排気熱の影響で析出物が減少し、詰まりが一時的に軽減される場合があります。排気温度が高い走行条件の後に警告が消えることがあるのは、高温環境で析出物の状態が変化するためと考えられています。
結晶詰まりが発生しやすい箇所は、以下の通りです。
- 噴射ノズルの先端部
- アドブルーフィルター内部
- 尿素水の配管接続部
温度が下がると再び結晶化が進行するため、一時的に警告が消えても根本解決には至りません。結晶詰まりが繰り返される場合は、ノズルやフィルターの清掃・交換が必要です。
ECUが一時的に正常と判定して警告灯が消灯した
ECUとは、エンジン全体を電子制御するコンピューター(Engine Control Unit)のことで、SCRシステムの動作状態を常時監視しています。ECUはNOxセンサーやアドブルーインジェクターから受け取るデータを分析し、異常値が一定回数以上続いた場合に故障コードを記録して警告灯を点灯させます。
エンジンの再始動後に故障判定条件が一時的に成立しなくなると、故障コードがペンディング(保留)状態に移行して警告灯が自動的に消灯する場合があります。以下は、ECUの判定動作をまとめた表です。
| 検出状態 | ECUの動作 |
|---|---|
| 異常値を検出 | 故障コードを記録し警告灯を点灯 |
| 正常値に復帰 | 警告灯を消灯(履歴は保持) |
| 再び異常値 | 警告灯を再度点灯 |
ECUが一時的に正常と判定しても、故障コードは履歴としてECU内部に記録され続けています。整備工場で診断ツールを接続すれば過去の故障履歴を確認できるため、警告が消えた後でも一度は点検を受けることを推奨します。
アドブルー噴射異常が出ても走行できる条件
アドブルー噴射異常の警告灯が点灯しても、直ちに走行不能にはなりません。走行を続ける際に把握しておくべき条件として、以下の2つがあります。
- 警告灯の点灯後に走行できる距離の目安
- エンジンを切ると再始動できなくなるケース
それぞれの条件を理解しておくことによって、警告が出た際に冷静かつ適切に対処できます。
それでは各条件について、詳しく解説していきます。
警告灯の点灯後に走行できる距離の目安
アドブルー噴射異常の警告灯が点灯した後も、エンジンを切らなければ走行を継続できます。ただし、一定距離の走行後に車内でブザー(警報音)が鳴り始める仕組みが搭載されています。
警告音が鳴るまでの距離は車種や年式、異常の内容によって大きく異なります。
以下は、警告灯の点灯からエンジン停止までの段階的な変化をまとめた表です。
| 段階 | 車両の状態 | 推奨する対応 |
|---|---|---|
| 警告灯点灯 | 通常通り走行可能 | 最寄りの整備工場へ向かう |
| 一定距離走行後 | ブザーが鳴り始める | 速やかに停車して修理を依頼 |
| エンジン停止後 | 再始動不可の可能性あり | ロードサービスを手配する |
警告灯が点灯した段階で、取扱説明書の指示を確認し、速やかにディーラーや整備工場に連絡するのが最善の対応です。ブザーが鳴る前に修理に持ち込めれば、走行制限がかかる事態を回避できます。
エンジンを切ると再始動できなくなるケース
尿素SCRシステムを搭載したディーゼルトラックは、アドブルーの噴射が正常に機能しない状態でエンジンを停止すると、排ガス規制の安全装置が作動して再始動できなくなる場合があります。これは、NOxの排出量が基準値を超えた状態での走行を防ぐために設けられた保護機能です。
再始動不可に至るまでの制御は、一般に出力制限→始動回数制限→再始動不可という段階で進行します。以下は、再始動不可の引き金となりやすい条件の例です。
- アドブルーの残量がゼロの状態
- 噴射システムの異常が長期間継続
- NOxセンサーの異常が累積的に記録
走行中にアドブルー噴射異常が発生した場合は、取扱説明書の指示に従い、安全な場所に停車してディーラーや整備工場に連絡してください。制御の段階や条件は車種・年式によって異なるため、自己判断で走行を続けず専門家の指示を仰ぐのが安全です。
アドブルー噴射異常の修理で交換する主な部品
アドブルー噴射異常の警告が繰り返し点灯する場合や一度消えても再発する場合は、故障した部品の交換が必要です。修理で交換する主な部品として、以下の3つがあります。
- NOxセンサーの交換
- アドブルーインジェクターの交換
- 尿素水チューブやフィルターの交換
それぞれの部品は故障の症状や診断結果によって特定され、いすゞのギガやエルフ、フォワードなど車種を問わず点検対象となる代表的な部品です。
それでは各部品について、詳しく解説していきます。
NOxセンサーの交換
前述の通り、NOxセンサーの故障はアドブルー噴射異常の原因として頻度が高い部品です。NOxセンサーは排気管に取り付けられており、高温の排気ガスに常時さらされる過酷な環境で動作しているため、経年劣化による故障が発生しやすい部品です。
NOxセンサーの交換が検討される主な症状は、以下の通りです。
- 警告灯の点灯・消灯を短期間で繰り返す
- エンジン出力の低下を感じる
- 診断ツールでNOxセンサー関連の故障コードが記録されている
NOxセンサーの交換費用は車種や部品の供給状況によって異なりますが、目安として1個あたり数万円から十数万円程度です(工賃を含む、時期や整備工場によって変動します)。ギガやフォワードなど車種によってセンサーの型番が異なるため、整備工場で車両に適合する部品を確認してもらう必要があります。
アドブルーインジェクターの交換
アドブルーインジェクターとは、SCRシステムにおいてアドブルーを排気管内に噴射するための部品です。インジェクターが故障すると、噴射量が不安定になったりアドブルーが正しく霧化されなくなったりするため、SCRの浄化効率が低下して警告灯が点灯します。
インジェクターの故障を引き起こす主な原因は、以下の通りです。
- 噴射口の詰まりや摩耗
- 内部のソレノイド故障
- 規格外アドブルーによる堆積物の形成
インジェクターの交換費用は車種や部品の仕様によって幅がありますが、数万円から十数万円程度が目安です(時期や整備工場によって変動します)。純正品以外の社外品を使用する場合は、適合性をディーラーや専門の整備工場で必ず確認してください。
尿素水チューブやフィルターの交換
アドブルーをタンクからインジェクターまで送るチューブ(配管)や、不純物を除去するフィルターも、噴射異常の原因となる部品です。経年劣化によるチューブの破損でアドブルー漏れが発生するケースも報告されています。
チューブやフィルターの交換が必要になる主な症状は、以下の通りです。
- チューブの亀裂や接続部からの液漏れ
- フィルターの目詰まりによる圧力異常
- 配管内の結晶蓄積による流量低下
フィルター単体の交換は比較的安価ですが、ヒーター内蔵チューブなどをアッセンブリ交換する場合は高額になるケースもあります。
漏れを放置するとアドブルーの消費量が増加し、周辺部品への腐食被害が拡大する恐れがあります。液漏れの兆候がある場合は、早期の点検・交換を推奨します。
アドブルー噴射異常の警告灯をリセットする方法
アドブルー噴射異常の警告灯を消すには、故障の原因を修理した上で、専用の診断ツールを使ってECUに記録された故障コードを消去する必要があります。リセットとは、ECU内部に記録された故障コード(DTC)を消去して警告灯を消灯させる作業のことです。
警告灯のリセットまでの流れは、以下の通りです。
- 整備工場で診断ツールを車両に接続する
- ECUから故障コードを読み取る
- 原因箇所を特定し部品交換や配線修理を行う
- 修理完了後に診断ツールで故障コードを消去する
- 試運転で警告灯が再点灯しないことを確認する
リセットに使用する診断ツールは、G-SCANなどの業務用スキャンツールです。G-SCANはOBD-IIに加えて国内商用車のメーカー固有診断にも対応しています。
トラック用のSCRシステムに対応した診断ツールは一般向けに販売されていないため、ディーラーや専門の整備工場に依頼するのが現実的です。
以下は、アドブルー噴射異常で記録されやすい代表的な故障コードの例です。これらは国際標準(SAE J2012)に基づくパワートレイン系コードの例であり、車種やメーカーによってはメーカー固有コードが併用される場合もあります。
| 故障コード | 主な異常内容 |
|---|---|
| P20C9 | SCRシステムの性能異常 |
| P20EE | SCR触媒のNOx変換効率低下 |
| P2201 | NOxセンサー回路の性能異常 |
故障の原因を修理せずにリセットだけを行った場合、ECUが再び異常を検出して短期間で警告灯が再点灯します。リセットはあくまで修理完了後の仕上げ作業であり、警告灯を消すこと自体が目的ではない点に注意してください。
アドブルー噴射異常に関するよくある質問
アドブルー噴射異常は自分でリセットできますか?
市販のOBD-IIスキャナーでは、トラック用SCRシステムの故障コードに対応していない場合が多いため、自分でリセットするのは困難です。また、原因を修理せずにリセットだけ行っても短期間で再点灯するため、ディーラーや整備工場で原因修理とリセットをあわせて依頼してください。
いすゞのギガやエルフで噴射異常が多い原因は何ですか?
いすゞのギガやエルフは国内で広く普及しているディーゼルトラックであり、走行距離や稼働時間が長くなるほどNOxセンサーやインジェクターの劣化が進みやすいです。特定の車種だけに起きる問題ではなく、尿素SCRシステムを搭載した車両全般に共通する経年劣化が主な原因です。
アドブルー噴射異常の修理費用はどのくらいですか?
修理費用は故障箇所や車種によって異なりますが、NOxセンサーの交換で数万円から十数万円程度が目安です(部品代+工賃、時期や整備工場によって変動します)。インジェクターやチューブの交換が加わると、総額がさらに上がる場合があります。
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